未来を見通せ(その2)

 国立研究開発法人情報通信研究機構 未来ICT研究所の一般公開に行ってきました。
地デジ波利用大気中水蒸気計測
 地デジ波利用大気中水蒸気計測
 測定のための測定波投射装置を必要とせず、大気中の水蒸気量を計測する原理を実証した装置。
 雨粒はレーダー波を反射するため計測できますが、水蒸気は測定できません。大気中の水蒸気量を測定する事でより高精度な予測が可能になるのですが、そのための簡易な手法を開発したとの事。
 地上波デジタル放送の電波が大気中を進むとき、水蒸気が含まれた大気は密度が高いことから電波の速度が遅くなって遅延する事に着目。その遅延はピコ秒のレベルである事からこの遅延を検出するための実証装置が展示されていました。
 実際に光(電波)が2mm進むのにかかる時間6.7ps程度の遅延を定量的に検出できており、実際の遅延プロファイルと気象情報等の統合を行い、水蒸気量を推定するようになっています。
 デモ装置は1kmの伝播距離を模する遅延器と可変遅延器で構成されており、可変遅延器はノブを使って伝送管を伸び縮みさせることで遅延の増減を生み出します。
 実証実験により実際の大気の測定を行ってデータを積み重ねているとの事でした。
深紫外線(DUV)通信
 深紫外線(DUV)通信
 開発された深紫外線(DUV)LEDを用いてデータを光通信で伝送するデモを行っていました。このデバイスは深紫外LEDは従来のデバイスより遥かに短い波長である265nmの波長で90mWと高出力なデバイスです。
 今までは殺菌灯(蛍光灯の蛍光塗料が無いもの)を用いていた領域の波長であり、ポータブルなウィルス・殺菌システムや特定微小領域への紫外線照射によるポイントオブケア型医療装置、短波長光源としての測定装置など幅広い応用が期待されています。
 また紫外線より短い波長によりより微細な集積回路の露光光源としても有望視されています。
HeLa細胞
 HeLa細胞
 遺伝子情報から様々な情報を読み解くプロジェクトの一角に有名な細胞サンプルが置かれて、顕微鏡で観察できるようになっていました。
 この細胞は世界で初めての培養し続ける事ができるヒト細胞株でヘンリエッタ・ラックス女史から切除された子宮頸がん細胞を培養しているもの。女史の名前からHeLa細胞と呼ばれています。
 ヒトパピローマウィルスによりガン化したこの細胞は不死性を得ており、条件さえ整えればずっと培養・増殖し続ける事ができる事から様々な用途・場所で利用され続けています。
DNA抽出実験
 DNA抽出実験
 子供も参加できる体験型展示で、ブロッコリーをすりつぶして濾過した液体からDNAを固定させて可視化することで抽出する実験をすることができます。実際に実験をするとDNAの顕微鏡写真のようなきらびやかなものは無く(涙)、綿くずのような物が析出してくるだけだったりします。
析出したDNA
 析出したDNA
 研究者はこの綿くずからPCRにかけたりシーケンスアナライザーにかけたりするのでしょうが、そこまでの実験は短時間ではできないためここまでで終了。
お持帰りDNA
 お持帰りDNA
 抽出したDNAはマイクロチューブに入れて持帰ることができます。
 アルコール固定ですので火気厳禁ではありますが。
 オマケ
軌道星隊 シゴセンジャー ショー
 軌道星隊 シゴセンジャー ショー
 明石天文科学館のヒーローであるシゴセンジャーが出張(笑)でショーを行ってくれていました(前説は明石天文科学館館長の井上さん)。
 肩に日本標準時子午線である東経135度を示す135EとJSTM(Japan Standard Time Meridian)のベルトバックルが目印のシゴセンジャーレッドとシゴセンジャーブルー、憎めない悪役のブラック星博士が登場し、さまざまな天文に関するクイズを解いていきます。
 ブラック星博士はたまらないダジャレでその場の空気を凍てつかせ寒い思いをさせるのが得意。天文科学館のプラネタリウムでは操作卓を乗っ取って邪魔をする事もあるようで、この時も暑く盛り上がる会場で寒〜い思いをさせられました(笑)。
PAWR
 PAWR
 NICTは気象関係の研究も盛んに行われており沖縄電磁波技術センター、大阪大学吹田キャンパスとこの神戸未来ICT研究所に設置されたフェーズドアレイ気象レーダーによる観測を元に30秒毎のリアルタイム計測を行ってゲリラ豪雨などの短期的で急激な気象変化の予測とそれに対応するための研究を行っています。
 一般的な気象レーダーと異なり、水平方向だけでなく垂直方向も含めた立体的な雨量分布が短時間(約10秒)で得られるため、より詳細で精密な気象変化を観測することができます。
 このほかにも多数の研究発表がありましたが、撮影ができていなかったり、肝心の面白いところが撮影できなかったり、写真では説明しづらい内容だったりと今回の記事で割愛した部分もあります。
 ぜひ機会があれば、ご自分で、その目で、様々な研究成果を直接ご覧頂く事をお勧め致します。
 その1はこちら

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA