青色LEDは誰が創ったか

いろいろと書籍が出ていますが、今回は日亜側の主張を検証したものです。
青色発光ダイオード
テーミス編集部 著 株式会社テーミス刊
青色発光ダイオード
日亜化学と若い技術者たちが創った
2004年3月30日 初版第1刷発行

今までに何冊か青色発光ダイオードについての書物を紹介しています。
赤崎 勇 著 青色発光デバイスの魅力(掲載記事
中島彰 著「青色」に挑んだ男たち(掲載記事
その他、読んだ本には西沢順一・中村修二共著「赤の発見青の発見」などの中村修二氏が語るいわゆる中村本があります。
今回の著書の特徴的なのは、いままで語られなかった日亜化学側の青色発光ダイオード開発から白色発光ダイオード、純緑色の発光ダイオード、ブルーレイDVDで実用化の鍵となる青色レーザーダイオード開発から量産にいたるまでの状況が明かされた事です。
実際に中村が起こした高額訴訟の裏側に見え隠れする本当の理由なども著者によって念入りに調査されて語られています。
この書籍の章を進めるごとに、中村修二という一人の天才?により開発されたという青色発光ダイオードいう幻の楼閣の正体が徐々に明らかになってきます。
決定的なのがノーベル賞を受賞した島津製作所の田中耕一氏との対比です。彼はノーベル賞を受賞した事でもスピンアウトする事もなく今も島津製作所に勤めて研究開発を続けている点と、破格の待遇を与えられながらスピンアウトし、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の教授として就任、その後に日亜化学のライバル社だったクリー社に移籍する予定もあった上に、古巣の企業を提訴するほか、あの会社は的なこき下ろしをし続けている中村修二氏。最もノーベル賞に近いと言われる人物とノーベル賞を受賞した人物の対比は大変興味があります。
実際に開発現場にいた頃の体験から言わせていただくと、「天才」が画期的なアイデアで「発明」しても、それを量産化し実用化するのは全く別の話です。発明だけなら誰でもできます。それを実用化して量産ラインに載せ、開発費を回収して採算を取れるようにする方がはるかに難しく、クリアしなければならない課題が多いのですが、その現場にはいっさい関わっておらず、自分が発明したというツーフローMOCVD(404特許)ではどの会社も量産技術として採用していない現実を無視して「天才である俺が発明した青色発光ダイオード」という主張は空虚な主張に見えてきます。
実際に窒化ガリウムだけがブレークスルーではなく、その後の本当に実用的な現在の青色発光ダイオードや青色レーザーダイオードへのブレークスルーには中村氏の関与や開発の関与は非常に薄く、ましてや量産へのブレークスルーについてはほぼゼロ。
中村修二ファンには、一度読んでいただいて、彼の主張のどこが現実と違うのかという検証をしてもらいたいとも思える本です。

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