いつか暮らせる

 地球の果てはありませんが、有限です。無限の世界へ誘う本でしょう。

小惑星移住計画 宇宙暮らしのススメ
 野田篤司著 あさりよしとお(絵) 学習研究社
 小惑星移住計画 宇宙暮らしのススメ
 2009年7月28日 第1刷発行
 ISBN 978-4-05-404142-4

 SFファンの間では野田指令で知られJAXA主任開発部員であり、宇宙機エンジニアである野田篤司氏による人類の太陽系内への進出を目指すための啓蒙書と言っても間違いではないでしょう。書中の漫画にはこれまた宇宙大好き、自他ともに認めるロケットマニアで学研の科学マンガの作者でも知られる、あさりよしとお氏による1ページ物のマンガが随所に挿入されています。
 3章立てで構成されており、前半2章が宇宙へ対する理解のための道程で、最終章である3章で宇宙へ広がるための具体的な手法・方法が展開されます。
 重力の大きい着陸や脱出に推進剤を多量に消費する月や火星と言った大型天体ではなく、内部まで利用尽くせる小惑星の開拓により人類は宇宙への版図を築く第一歩を進めるべきであるというスタンスで具体論が展開されます。
 2章の宇宙の常識・非常識のところで、言われてみればそうなのですが、理屈を進めていけば簡単に判るはずの理屈が自分に抜け落ちていたりする事を再認識させられました。
 天文の趣味についていた事もありケプラーの法則の第3法則「惑星の公転周期の2乗と公転軌道の長半径の3乗に比例する」という事を人工天体に当てはめたときの想像が抜け落ちていたのです。
 軌道上で減速を行うと速度が下がるので当然遠心力と重力のバランスが動くため最終的に軌道高度が下がります。すると先の第3法則で示されたように軌道半径が小さくなると公転周期が小さくなります。ということは、公転時間が短くなるため減速したにもかかわらず最終的に速くなってしまうという結果が得られます。
 逆に加速すると軌道高度が上がり、速度が落ちる結果を招きます。
 端的に表現すると減速すると速くなり、加速すると遅くなるという結果を得られる事になり、一般的な常識からは逆の結果を得る事になります。
 理屈を詰めれば、ははぁ、となるのですが、そうですよね?と言われてもすぐにはピンと来ませんでした。
 とにかく。現役の宇宙機エンジニアが実存する確立された技術をベースに人類が宇宙へ版図を広げるための第一ステップを提示してくれている訳です。予算がどうのという経済面の理由はさておき、技術的には夢ではない現実がそこにあるわけで、乗らない手はありません。
 もう、宇宙進出は夢ではないのです。

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