青色発光ダイオード

またもや青色LED関連の書籍です。
青色発光ダイオードは誰のものか
日刊工業新聞社 B&Tブックス刊
谷光太郎 著
青色発光ダイオードは誰のものか
〜世紀の発明がもたらした技術経営問題を検証する〜
2006年1月30日 初版第1刷発行
ISBN4-526-05573-5

著者は三菱電機の半導体研究所(当時国家プロジェクトだった超LSI技術共同研究組合の研究所が設置されていた)にも勤めた現場の人。
いうなれば半導体開発のかつての現場にいた立場から、青色発光ダイオードの成功の経路を検証しようと言う見方で記された本です。
しかしながら、前半に大きく占められた特許報奨金への企業と発明者個人との訴訟事例が導入部とはいえ、タイトルからは離れた内容になってしまっています。中村修二が特許係争をしていることに重きが置かれ、誰がどのような経緯で青色発光ダイオードの実現に至ったかの部分はさらりとしか書かれていません。
その点、青色LEDは誰が創ったかで紹介したテーミス編集部編「青色発光ダイオード」や、青色の一人で紹介した「青色発光デバイスの魅力」の著者であり窒化ガリウムで青色発光を実現した本来の青色発光ダイオードの発明者である赤崎勇の言、さらに青色にまつわるで紹介した中島彰による「「青色」に挑んだ男たち」は取材などを丁寧に行い、当時の開発者(本人が著者でもある書籍も)や現場を指揮した人たち、同僚研究者、当時の発明の元となった研究を行っていた研究者などの言葉を交えて構成されており、いきさつなどを知る事が出来ていたのですが、どうもこの本は勝手が違います。
本文中、だれそれがこう言った的な引用で同じものが何度も繰り返して登場。ページを置かずしてまた出てくる、という箇所が何カ所もある上、この内容は何度登場するのか数えたくなるぐらいのものもあり、かなり辟易させられました。
今回読んだこの書籍では、ほとんどインタビューをせず、他人の記した書籍や記事などから情報を寄せ集めて、はっきりとした結論も出ないまま巻末に至ってしまっているという印象は拭えません。「いったい誰が発明者と言えるのか」という点については曖昧なままで、著者のはっきりとした結論が見えてきません。
どうも、もやもやの残る一冊でした。
「技術」ではなく「技術経営問題」を検証するということですので、こちらの読みたかった目的と違う書籍だったのでしょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA