科学の光で照らそう 2014

 ここのところ続けて一般公開にお邪魔していますが、今年も参加。
 過去の記事はこちらを参照してください。
 2012年
  その1(SPring-8 線形加速器)
  その2(SPring-8 シンクロトロン)
  その3(SPring-8 蓄積リングとビームライン)
  その4(New SUBARU)
  その5(XFEL SACLA)
 2013年 記事(New SUBARU 蓄積リング)
 過去の訪問でおおまかな部分はご紹介させて頂いてますので、今回はそれ以外の小ネタ的なものをご紹介しようと思います。
ビームプロファイルモニタ
 ビームプロファイルモニタ
 明るく表示されている部分が直線加速器に取り付けられたビームモニタです。上から観測窓、反射鏡2枚、モニタカメラの構成となっています。
 高エネルギー電子が当たると放射化して放射能を帯びてカメラが壊れてしまうため、直接観測窓を直接カメラで観測せずに鏡で反射させてからカメラに導いています。
 測定時はビームラインに1mm厚クロム含有アルミナのスクリーンを挿入し、その反射光を鏡でカメラに導いてビーム形状を観察し、不具合があれば観察プロファイラの前段の電磁石などを調整します。
 当然ですが観測中は電子ビームが遮られてしまいますので、通常運転時はビームプロファイルのモニタリングはしません。
エネルギー圧縮システム(ECS)
 エネルギー圧縮システム(ECS)
 線形加速器中で特に放射能を帯びている箇所がこのエネルギー圧縮システムシステムです。見学時は鉛のブロックを並べた遮蔽を行っていました(クリーム色の衝立様のものが遮蔽板で、上部に鉛ブロックが並べられている)。
 エネルギー圧縮システムでは偏向電磁石を用いてバンチの経路を曲げる事でバンチ内の電子の持つエネルギーの差にビーム軌道差による行路差(距離の差)を利用してエネルギー差による電子の位置を振り分け、その後の加速管で変調する事でエネルギー幅を圧縮します。
 エネルギー圧縮システムにより1%程度のバンチ内電子のエネルギー差が0.5%まで圧縮されます。
 電子の経路を曲げるためどうしても取りこぼす電子が発生し、それらが機器内の物質に当たる事で放射性を帯びるため、この区画では非運転時は遮蔽をおこなっています。実際にガイガーカウンターを当てると、2〜30カウント/secぐらいはあるようです。
導波管の注意書き
 導波管の注意書き
 直線加速器では2856MHzの周波数で80MW・4μsec、60パルス/secの高周波を用いて電子を直線加速します。
 加速空洞に通す高周波出力は電線ではなく、強制水冷の二重パイプ形状の導波管を用いて行っているのですが、接続部のフランジボルトが緩んで隙間ができると、その隙間から加速に使っている電磁波が漏れる事により感電や火傷の恐れがあります。
 ちょっとビリビリなピクトグラムと注意書きがネジで締結している導波管の各所に付けられていました。
SACLA光源棟
 SACLA光源棟
 発振から2年、発振実験に成功した時の公開時はアンジュレータ以外はガラガラだった光源棟に、次々と機材が設置されていました。
 何気に普通の床に見えるこの光源棟の床はコンクリートを50μm精度の平面研磨を行ったという脅威の技術の賜物なのです。それぐらいの精度と確度でなければXFELの波形重ね合わせによる発振はできないのです。
 また振動も10nmレベル、温度管理は0.01℃の変動レベルで管理しているそうです。
 要らぬ心配かもしれませんが、一般公開で外部から大量にいろんなもの(チリやホコリなど)が持ち込まれるので後の清掃が大変なのではないでしょうか。入退出部に粘着マットが設置されていましたが、ほんの気休めレベルではないかと。
オプティカル・クライストロン
 オプティカル・クライストロン
 New SUBARUのレーストラック型蓄積リングに設置された国内有数の長さを誇る11m長尺アンジュレーターの反対側の直線部にあるオプティカル・クライストロン。SACLA同様に自由電子レーザー(FEL)用の光クライストロンなのですが、設営当初入れたにもかかわらず、研究するためのマンパワー不足・手をつける人が居ないことからあまり利用されていなかったとの事。
 近年、レーザーコンプトン散乱によるガンマ線専用ラインを設置して利用し始めたようです。
クライストロンと電源部
 クライストロンと電源部
高周波加速空洞
 高周波加速空洞
 New SUBARUの1GeVを維持するために1ヶ所設置された加速空洞と、その高周波を造り出すクライストロン、その電源部です。
 クライストロンのそばまでは見に行けないので遠方からの撮影ですが、塔のようにそびえ立ったクライストロンとその横の巨大な箱の電源部が印象的です。高圧・高出力高周波を取り扱うため、ケーブルも太い上に周囲を柵で囲まれているのが危険さを物語っています。
 ここからはオマケです。
ピコネコ
 ピコネコ
 SACLAの実稼働が始まり枕詞が付加されて「世界一小さいものが見えるX線レーザー ピコスコープ SACLA」となりました。
 SACLAのX線自由電子レーザーの波長は63pmで、現状世界一小さい波長で観察できる機器となります。またパルス幅は30fsと極短時間であり、原子同士の反応を観察する事ができる事が期待されます。
 一般向け広報のためにゆるキャラ®が新たに作られまして、名前がピコネコ。目が「ピコスコープ」のキャラであることから虫眼鏡をイメージしています。
播磨サクラ
 播磨サクラ
 どうしてこうなった的驚きが凄かったのがこちらの播磨サクラ。これはポスターですが、実はメカものアニメのオープニングをイメージしたアニメーションがあり、その中の一コマだったり、イメージイラストなどがあちらこちらに貼ってありました。
 後ろにある機材のカバーだとは思いますが、施設内各所に頻出しています。
 建家2階のホール会場では制作されたアニメが大きなディスプレイで放映されていました。YouTubeバージョンとは一部違う映像で、別途制作されたものを流していた模様。

 未来光子 播磨サクラ
 なかなかマニア受けする設定があり、クリエーター側のスタッフ名が凝っています。ネタバレ覚悟の方はどうぞ。
 企画・プロデュース
 礼座美夢(れいざ・びいむ/レーザービーム)
 彦目 透(ぴこめ・とおる/ピコ目通る)
 杏樹鈴大(あんじゅ・れいた/アンジュレータ)
 シリーズ構成 寺戸瑠次(てらへ・るつ/テラヘルツ/THz)
 助監督 三黒奈乃(みくろ・なの/ミクロ〜ナノ)
 キャラクターデザイン 富江向斗(ふえ・むと/フェムト)
 総作画監督 須羽 昆(すぱ・こん/スパコン)
 美術監督 榮美丹守(えみ・たんす/エミッタンス)
 色彩設計 布央 敦(ふお・とん/フォトン)
 編集 葉 流清(パ・ルス/パルス)
 音響監督 家倉 登(カソ・ド/カソード)
 アニメーション制作 オングストローム兵庫
 監督 江楠 礼(えくす・れい/エックスレイ/エックス線)
 ちなみに提供は「ピコスコープ・SACLA」です。
 SPring-8の施設一般公開は楽しいのですが、なにせ広い敷地内をあっちへこっちへ移動するため、移動用バスが巡回しているとは言え、かなり疲れます。こんな事を言うと、案内してくださっているスタッフの方々から文句が来そうですが。
 また、今回は天候も良かったこともあり別件で理化学研究所が有名に(苦笑)なった事も手伝ってか8,000人を超える来場者数があり、かなりどこも混雑していました。
 少し残念なのは、見学コースの対象となっている施設内の場所がだんだんと減ってきている事です。
 すでにSPring-8の蓄積リングの全周、シンクロトロンリングは見る事ができなくなっていますし、直線加速器棟の2階(クライストロンや高周波電源がある)も公開されていません。
 スタッフの方もご苦労があるかとは思いますが、次回にはぜひ公開して見せて頂きたい事を願ってやみません。

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